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預貯金の金利による資産形成に比べ、この時期土地による資産形成がいかに有利であったかは容易に理解できる。
ここに、戦前、戦後での土地意識の大きな差が生じた理由がある。 日本人の持っている立身出世の意識や、戦後相次いで現れた経済スキャンダルも、すべてこの土地意識の変化に伴って大きく変容したと言っていい。
戦後も一九六〇年ころまでは、経済の成功の原因は勤勉さにあり、働いて付加価値を増やすことが大切だと思う健全な経済感覚一が誰にもあった。 サクセス物語の主人公は、M氏であり、H氏であった。
しかし、高度経済成長とともに、その意識が変わってくる。 成熟社会のなかでは、もはや勤勉さによって財を成すことが難しくなり、唯一の蓄財の手段が土地、株へと変わっていく。
楽して大儲けするには地価の上昇で利ざやを稼ぐことだとする風潮が高まってくる。 T元首相と、その例頚の友の〇氏の登場はその代表的なサクセス物語になった。
企業の経営者のみならず個人の経済感覚の中にもこの意識が強く現れ、一億総不動産屋の風潮が生まれたのである。 たくさんの成功者、土地成金も現れてくる。
三〇年前には存在ずらしていなかった不動産会社が何兆円の資産を有する大会社に成長し、社長は財界有力者にのし上がる。 集団就職で上京したある歌手は、不動産で大成功し、歌う不動産王だと、本業より不動産での成功を世の中は褒めそやした。
庶民は「T様には及びもないがせめて成りたやS氏」と思ったものである。 土地不動産こそが、ノンエスタブリッシュメントがエスタブリシュメントにはい上がる墨両の手段であり、バブル経済こそ、その絶好の機会であった。
戦後のすべての経済スキャンダルにも、この風潮が根底にある。 最近のJ社がらみの一連のバブルの紳士達、S社事件、R社事件、L社事件などを振り返れば、そこでの利権の根源はすべて土地不動産、盤刊円であり、いかに土地神話が進んだ社会、経済を生んだのかを明確に示している。
土地神話は、戦後の高度経済成長の陰の部分であるが、いつまでもこの風潮が続くはずもない。 バブルの増殖と崩壊はこの警砲を根本から問うことになった。
不動産金融危機への対処を検証するもうからない投機であるということがバレた後に、客は蜘妹の子を散らすように逃げ去るのだ。 あらかじめ不可能な「ソフトランディング」を装ったことが傷を深くしてしまった。
バブルの再来はありえない。 ソフトランディングはもともと不可能だったのであるバブル崩壊の過程において、急激な地価の低落は経済に悪影響を及ぼすという理由で地価の低落を抑え経済の成長を待とうという「ソフトランディング」が求められた。
地価公示価格は、徐々に下がってきたように意図的に操作された。 毎年の地価公示の度に不動産業者などの供給者はいまが底だと言い続け、実勢地価は大きく下がっていたにもかかわらず、公示地価は徐々に下がっていくように操作されたきらいがある。
そのため、地価はますます不透明になり、混乱が強まった。 不透明な地価がかえってバブルの傷を拡大してしまったのだ。
経済の成長を待ってバブル崩壊の傷を解決しようという「ソフトランディング」の考え方はそもそも無理だったのである。 もうからない投機であるということがバレてしまうと、客は蜘妹の子を散らすように逃げ去るものであり、市場から秩序良く、順番に需要が消えていくことなどありえない。
にもかかわらず、ソフトランディングが可能であるかのように装い、地価を徐々に下げていったことがバブルの傷を一層深くしてしまったのだ。 地価の価格メカニズムが働き、市場として健全に機能するためには、購入者の購入能力と投資採算に見合った水準、つまり、収益還元価格に地価が回帰せざるを得ないことを意味している。
つまり、住宅地は、平均的消費者が購入可能なアフォトダブルな水準に、商業地では、投資家が確実に利回りを確保できる水準に戻ることなのである。 だから、この流れの下では収益還元価格に回帰するまで地価の低落は止まらない。
商業地、特に都心部の商業地の市場は限定されたもので、M社やMビルなど大手ディベロッパーがつくり出す市場であり、中小不動産業者や個人が参入できる市場ではない。 彼等が市場を握っているにもかかわらず、汐留旧国鉄跡地にしろ、ホテルN跡地にしろ、地価が底だというのに箆守は買いに入らない。
それはつまり、底だと思っていないからだろう。 多くの含み資産を持ち、低利回りでも取得することを可能にする体力を持つ大手ディベロッパーが買わない以上、市場が動くはずがない。
最近になって旧国鉄用地の競争入札による払い下げが行われたが、これも外資系金融機関が手を出すだけで、日本の不動産企業には元気がない。 住宅地について言うと、住宅価格が劇的に下がったことで、バブル期に後退していた需要が戻り、一時的にマンション用地など顕著な需要回復も見られた。
しかし、今後安定的に需要が維持されるためには、より広い、質の高い物件が安価で供給されなければならず、アフォーダブルな住宅を安定的に供給していくためには、さらなる地価の低落は避けられないだろう。 さらに、定期借地権の普及で土地所有権の必要性は後退していくに違いない。
不良債権の償却により不良資産の放出が進むことで需給関係が緩み、住宅地の価格もなお弱含みで推移するしかないだろう。 姑息なごまかしと先送り、先延ばしに終始した政府の不良債権対策不良債権とは、バブルの時期、土地不動産に投入された投機資金で、バブル崩壊による地価の急落によって担保不動産では回収が不可能になった債権、すなわち融資先が破綻した債権、六カ月以上金利の支払いが遅延している債権、それに当初の金利を公定歩合以下に引き下げている金利減免債権などとされている。
金融機関全体の不良債権について大蔵省の発表では、一九九五年三月現在で四〇兆円だといわれていたが、その後の金融機関の償却が進んだ一九九六年二一月時点では二九兆円に減少したとされていた。 ところがすでにその時点でも過小だと疑問視する見方も多く、実際の不良債権はその二倍とか三倍ともいわれていた。
九八年一月になって、銀行の自己査定で不良債権を算定してみると七六兆円、それが九八年三月には九〇兆円になったということである。 この七年間、ありえぬ地価の再上昇を期待して処理の義語りが続いてきた。
まず、大手銀行の不良債権を無針縫思却するために金融機関が共同で出資した共同債権買取り機構が一九九四年に設立された。 これはもっぱら不良債権の形式的な買い取りを行い、帳簿上の償却を進めてきている。
銀行がにっちもさっちも行かない不良債権を共同債権買取り機構に譲渡し、不良債権を消そうとするのだが、その資金は自らが共同債権買取り機構に貸すのであるから、右手から左手に不良債権を移して、処理したような気分になるだけの話である。 損失を無税で帳簿上償却しようとする実に姑息な対策なのだ。
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